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ジャパンカップ謎の地方馬・クリノメガミエースとは何者なのか?

26日に東京競馬場で行われるジャパンC(G1、芝2400メートル)に、地方競馬から兵庫のクリノメガミエース(牝4、石橋)が登録することがわかった。

9日、管理する石橋満調教師(42)が「オーナーが以前から、再びJRAに使いに行ってほしいとおっしゃっていました。このような舞台に挑戦させていただけることを、感謝とともに光栄に思います」と話した。鞍上は兵庫の吉村智洋騎手(38)が務める予定。
クリノメガミエースは21年8月28日にJRAでデビュー。札幌新馬戦(ダート1700メートル)を勝利した。その後は5戦して未勝利で、翌年3月に兵庫の石橋厩舎に転入。2戦目から3連勝で重賞のぎふ清流C(笠松)を制した。前走は園田の重賞、兵庫クイーンCで4着。通算成績は23戦6勝(うち中央6戦1勝)。
- 地方競馬兵庫所属クリノメガミエースがジャパンCに登録へ - 日刊スポーツ

ということで、本日は現在競馬界の話題を席巻している1頭の牝馬についての解説です。

「賞金目当て」「売名」と騒がれているジャパンカップ出走、オーナーサイドの真意はどこにあるのか?クリノメガミエースのこれまでの経歴から考察します。

※本記事はいち兵庫競馬ファンによる考察・独自研究です。一部事実と異なる場合があります。また、関係者各位より当該記述に関するご指摘を頂いた場合、記事公開後に編集を行う場合があります。

来歴

中央競馬

クリノメガミエースは2019年2月26日、日高町の日西牧場で産まれました。父エスポワールシチーはGI級競走9勝、母クリノバンダイサンも栗本博晴氏の所有馬で、未出走で繁殖入りしています。両親共にダート血統ですね。

美浦本間忍厩舎に入厩し、2021年8月28日(札幌ダ1700)にデビュー。逃げた1番人気馬が落馬した影響を各馬が受けた中、不利を被ることなく早め先頭に立つとそのまま脚を伸ばして8馬身差で勝利を収めました。着差は大したものですが、落馬に影響されなかった幸運が影響したところも大きく(後に本間師も「初戦は落馬に巻き込まれなかった運の強さもあった」としています)、メンバーレベルにもケチがつきます。このレースから出世した2着以降の馬は'22きさらぎ賞3着のメイショウゲキリンくらい……。

メガミエースの話しに戻りましょう。次走は連闘で札幌2歳ステークスに挑戦しますが、所詮ダート馬と見限られたのか9頭立て9番人気、結果も勝ったジオグリフから5秒2差、前と大差がついたブービーの馬から更に10馬身離された殿負けとなりました。以降、ダートの自己条件で人気もせず中位にも来ず、というレースが4戦続き、遂に栗本オーナーはJRAからの転出を決めました。

兵庫競馬転入

クリノメガミエースは兵庫競馬へ転入することになりましたが、ここで預託先に選ばれたのが今年(2023年)開業5年目を迎える西脇・石橋満厩舎でした。「クリノ」冠名かつ馬主が「栗本」姓の競走馬を多数抱えているのは石橋師が兄のような存在と慕う橋本忠明調教師。橋本師と栗本オーナーは、気鋭の若手調教師にメガミエースの管理を託します。

クリノメガミエースは、社長(栗本オーナー)と橋本先生が『これで重賞勝て!』と言って預けてくださった馬なんですよ。 - クローズアップ 2022/09 - Charge Advanced(三宅きみひと)

転入初戦こそ「全然競馬にならなくてダメかなと思った」そうですが、兵庫でメンタル面の脆さが解消されたことが功を奏しました。移籍2戦目・3戦目を連勝し、6月には笠松・ぎふ清流カップを逃げ切り勝ち。石橋厩舎に初めての重賞タイトルをもたらしました。

2日、笠松競馬場で行われた第5回ぎふ清流C(3歳・重賞・ダ1400m・1着賞金500万円)は、先手を取った吉原寛人騎手騎乗の1番人気クリノメガミエース(牝3、兵庫・石橋満厩舎)が、並んできた2番人気ヘイシリン(牡3、愛知・坂口義幸厩舎)を直線で突き放し、最後はこれに3馬身差をつけ優勝した。 - 【笠松・ぎふ清流C結果】兵庫のクリノメガミエースが逃げ切り重賞初V - netkeiba.com

重賞勝利後

その後のメガミエースですが、あと一歩のところで重賞2勝目には届いていません。2022年末から翌年明けにかけてはかなり惜しいチャンスがあったのですが。

スタート決めたかったタガノウィリアムだが、いつもながら一歩目が遅い。そのためハナに行き切れず、先手を奪ったのは隣枠スマイルサルファー、一番人気ラッキードリームも抜群のスタートを決めてスンナリ2番手付け。しかし、最初のコーナーにさしかかる前に一気に動いたのが唯一の3歳、唯一の牝馬クリノメガミエース、スタンド前ではさらに加速、一時は10馬身ほど離しての逃げ。(中略)そのあとがメガミエース、このメンバーで(3)着なら上出来、来年以降に楽しみは広がった。 - 第65回園田金盃 レースレポート - 園田・姫路競馬(北防敦)

クリノメガミエースは隊列が決まりかけたところでハナを奪い、そこから加速して大逃げ。場内を沸かせただけでなく、ゴール寸前まで2番手で踏ん張り、力のあるところを見せた。 - 【3日園田11R】軽量52キロを味方にクリノメガミエースが初笑い - サンケイスポーツ

楠賞3着から参戦した園田金盃。ラッキードリーム、ジンギ、タガノウィリアムの頂上決戦に注目が集まる中、ぎふ清流C以降未勝利ということもあってか6番人気と軽視されていました。ところが人気薄に反発するように強引に仕掛けると、道中は2番手以下を引き離しての大逃げでスタンドを沸かせます。一気に進出してきたラッキードリーム、そして最後は出遅れを盛り返してきたジンギに差されるも堂々の3着。このレースを目撃したファンは誰しも「来年は大きな仕事をできる」と夢を見たのではないでしょうか。

残念ながら有力候補であった新春賞で再びの3着。その後牝馬限定戦でも勝ちきれないまま時は流れ、気がつけば地元には新たなヒロインが誕生し、全国クラスの女傑と互角に渡り合っていました。

なぜジャパンカップへ?

さて、そんなさなかでのジャパンカップ参戦となるクリノメガミエース。JC後には昨年好走した金盃が控えているだけに、敢えてこれをスルーしてGI出走…というのは些か不可解ではあります。

多くの方が「賞金目当てだ」と批判していますが、これは今回の場合当てはまらないでしょう。これは単純に、ジャパンカップで賞金圏内に入ることが目的ならば、より着順の良化が見込める「クリノメガミエース以外の所有馬」がジャパンカップに登録するはずだからです。

先に述べた通り、栗本オーナーは石橋師に経験を積ませるという観点から預託している節があります。単に地方でひと稼ぎするためなら、メガミエースは従前通り橋本厩舎に任せたほうが良いでしょう。それをわざわざ『この馬で初重賞取れ!』とハッパをかけている。この中央遠征も実現すれば石橋厩舎は初の東京競馬場への遠征、初の中央重賞参戦となります。現実的に賞金面ではほぼ実のない出走ですが、石橋師・厩舎スタッフにとって貴重な経験となることでしょう。

一方、メガミエースにとってのメリットとしては、陣営がイマイチ勝ちきれていない現状を打破するきっかけを欲しているようにも感じられました。

今回ジャパンカップ出走に否定的な意見として「地元で身の丈にあったレースに出ろ」とのものが散見されましたが、現にクリノメガミエースは近4走、重賞に限れば5戦連続で地方馬同士の牝馬限定戦を戦っています。そこで良くて馬券内、あるいは掲示板という走りが続いているわけです。昨年と比べて重賞戦線での存在感が薄れつつある中でファン投票によって金盃に出走できるか確証がなく、かと言って当分牝馬限定戦もなく、また平場で男馬と戦うのもあまり良い話ではなく……(休み明けではありますが、本年6月のA1A2特別にて12着に大敗しています)。

そんな折、ジャパンカップがフルゲートを大きく割り込むのではないか、という想定が出ました。

オーナーサイドはメガミエースの近走、次走の候補、そこで得られそうな戦績を考慮した結果、「石橋調教師が得られる、他では代えがたい経験」を取られたのだと推察しました。

終わりに

過去、ジャパンカップには多数の地方馬が参戦してきました。

第1回競走で日本馬最先着を果たした浦和出身・ゴールドスペンサー。

地方からの移籍組として中央重賞で存在感を示し、ジャパンカップでも善戦したヒカリデュールやカズシゲ。

人気薄ながらシンボリルドルフの2着に飛び込みあっと言わせたロッキータイガー

6年連続で参戦し、北の大地から夢を追い続けたコスモバルク

それまでのレコードに迫る2分22秒2で力走したハッピーグリン。

昨年も水沢からもう一度中央に、世界に挑んだリッジマンがいました。

そして今年、61戦の長い旅路の終着点に再び中央を選んだチェスナットコート、若きトレーナーと共に大舞台に立つクリノメガミエース。

地方競馬ファン、兵庫競馬ファンとして、両馬の挑戦を目に焼き付けます。